東京都国立を拠点に、多摩地区の「こころの産業医」を目指す、きしもと産業保健事務所。
代表の岸本雄(きしもと・ゆう)は、精神科専門医であり、認定産業医として、患者様はもちろん、担当企業の社員の皆様の心の健康と安全を支えています。
一方、埼玉県狭山市に本社を置き、貴金属リサイクル及び貴金属薬品の製造を行う小島化学薬品株式会社。同社がきしもと産業保健事務所へ産業医を依頼した背景には、化学薬品を取り扱う現場ならではの課題と真摯に向き合う姿勢、そして「信頼できる産業医を探したい」という強い思いがありました。
今回は、総務部部長の渡辺様に、依頼前に抱えていた不安から、実際に感じた変化までを、岸本との対談形式で詳しくうかがいました。
記録者:岩井なな
依頼前の状況:「現場に足を運び、適切に対応してくれる産業医を探していた」
— 依頼前には、どのようなお悩みがあったのでしょうか。
渡辺様:
以前からお世話になっていた産業医の先生が他の勤務地へ異動になり、その方の後期研修医時代の同級生として紹介いただいたのが岸本先生でした。
これまで20年以上に渡って産業医の先生と契約してきましたが、定期的にきっちり来ていただくというよりは、正直「お金を払って産業医をお願いしているだけ」という、少し距離のある関係性で、密なやりとりができているとは言い難い状況でした。
しかし、法律や社会の流れが変化する中で、そのままの体制では不十分となり、約8年前からは毎月きちんと訪問していただける産業医の先生にお願いするようにしました。その流れの中で、3人目としてご担当いただいているのが岸本先生です。

— 産業医選びにあたって最も重視したのはどのような点ですか?
渡辺様:
一番重視していたのは、休職が必要になるケースや、心の不調を抱えた社員にも適切に対応していただける先生であるかどうかでした。
また、当社は多数の化学薬品を取り扱う会社で特殊な作業も多く、わずかな不注意が大きなけがにつながる可能性があります。しかし、社内に安全面の専門的な知見を持つ相談相手がいるわけではなく、その点にも大きな不安を感じていました。
そういった背景から、私たちは「現場にしっかり足を運び、状況を理解したうえで対応してくれる産業医にお願いしたい」という思いが非常に強くありました。
岸本先生を選んだ理由:「安心して任せられるという確かな存在感と信頼感」
— なぜ最終的に岸本先生に依頼することを決めたのでしょうか。
渡辺様:
いろいろなタイプの産業医の先生がいらっしゃいますが、岸本先生は物事をはっきりおっしゃるタイプで、第一印象からとても頼りがいを感じました。そうした明快さや存在感が、当社にとっては新鮮で、とても心強く感じられました。
新たに産業医の先生を決定する際に面談をさせていただきましたが、その中でも「この先生なら安心して任せられる」という確かな信頼感が、最終的な決め手になりました。
岸本:
当時、産業医として開業したばかりの私に「ぜひお願いします」と声をかけてくださったのが、小島化学薬品さんでした。その言葉が本当に嬉しく、大きな励みになりました。
前任の先生は私の同期で、とても丁寧で誠実な仕事をする人でした。精神科の先生の中でも特に細やかに対応されるので、そんな方からご紹介いただいた以上、その先生の顔に泥を塗るわけにはいかないという思いがありました。だからこそ、自分も頑張ろう、しっかり務めようと気持ちが引き締まったことを覚えています。

依頼後の変化:「職場特有のリスクに関する資料を毎月作成してもらっている」
— 実際に依頼してみて、どのような変化がありましたか。
渡辺様:
まず驚いたのは、相談メールへの回答が早く、しかも内容が非常に濃い点です。しっかり吟味された回答がすぐに返ってくるため、毎回驚かされます。
当社では総務部が中心となってさまざまな相談を行っていますが、それとは別に安全衛生委員会も設置していて、岸本先生にはその委員会の中で、職場のリスクや相談事項に関する資料を毎月作成していただき、社員への教育も実施いただいています。
夏場の熱中症対策、重い荷物を扱う際の腰への負担、粉じんが発生する環境で必要となる対策など、さまざまなテーマを毎月欠かさず取り上げてくださっています。こうした取り組みは、これまでお願いしてきた産業医の先生の中でも群を抜いて丁寧で、非常に心強く感じています。
岸本:
安全衛生委員会で挙がった課題に対しては、現場で実際に役立つ情報を必ずお返ししたいと考えています。そのため、委員会で話題になった内容に合わせて、「事業への影響」や「事業を止めないための具体策」といった現場がすぐに活かせる視点で毎回資料のテーマを設定してきました。
法改正で求められる水準や実務で必要となるポイントをわかりやすく整理して伝えることも常に意識しているポイントです。準備に時間がかかり反省することもありますが、「現場で使える情報を届ける」ことを何より大切にしています。
短期的な成果と中長期的な変化:「月に一度の職場巡視での細やかな指摘が安全意識の向上につながった」
— 依頼後、解決した課題はありましたか?
渡辺様:
短期的な成果としては、月に一度の職場巡視での細やかな指摘が助かりました。担当者と綿密にスケジュールを調整し、業務内容が多岐にわたる社内の隅々まで確認していただいています。
「この姿勢では腰に負担がかかるんじゃないですか?」「仮に化学薬品を浴びてしまったらどのように対処しますか?」日々の業務の中でふと見逃してしまいがちな問題点について、先生の視点から適切に指導していただけたことで改善につながりました。現場を直接見るからこそ私たちでは気づけない点を発見してくださり、お願いしてよかったと感じる瞬間です。

岸本:
指摘させていただいた内容への現場の対応スピードの速さには、いつも驚かされています。指摘を受けた箇所はすぐに撤去されて補強されたり、転倒リスクのあるホースをまとめる機材が自作されていたりと…現場ならではの様々な安全策が駆使されています。しかも良い取り組みはすぐに他の部署にも水平展開していく…安全意識の高さを感じます。
私自身、「もっとよくするために自分に何ができるのか」を常に考え続けなければ追いつけないほどで、むしろ私のほうが学ばせていただいている部分も多いです。
渡辺様:
中長期的には社内全体の安全意識の向上が大きな成果だと感じています。安全衛生委員会での指摘を各部門へ落とし込み、会社全体に安全を守る姿勢が根づきつつあります。
以前は、安全に関する指摘を受けても対応が遅れたり、そのままになってしまったりするケースが少なくありませんでした。しかし現在は、岸本先生から指摘や助言を丁寧に伝えていただけることで、安全面への意識が大きく改善されました。
また、具体的な改善策を交えてご指摘くださるため、現場でも迅速な対応が進み、その積み重ねによって安全意識が自然と高まったのだと思います。今では、以前には徹底できていなかった 安全面を優先した動きが組織全体に広がっています。
印象に残っているエピソード:「主治医と会社の間に入り、常にフラットな立場で判断し、いくつもの“道”を提示してくる」
— 特に心に残っているやりとりはありますか?
渡辺様:
メンタル面の不調で休職している社員や、体調が優れない社員への対応が印象的です。そうした方々への面談では、適切なアドバイスをいただくだけでなく、主治医と会社の間に入り、常にフラットな立場で判断し、いくつもの「道(対応策)」を提示してくださる。一本の意見を押しつけるのではなく、複数の方向性から一緒に考えてくださるため、その助言をもとに会社としての対応を検討でき、総務としても非常に動きやすいと感じています。
このような部分にも時間を割いて対応していただいていて、とても助かっています。
また、先生は一度お話しされた内容でも、持ち帰って熟考されたうえで、よりよい方向性が見つかれば訂正してくださいます。こうした謙虚さと誠実さのある姿勢に、私たちは大きな信頼を寄せています。

岸本先生:
明確に伝えることは大切ですが、言い方を誤ると「自分が正しい」というトーンに聞こえてしまうことがあるかもしれないことを常に念頭に置いています。現場から戻ったあとで確認し、解釈が違っていたと気づいたときには、必ず「先ほどの説明は違っていました」と訂正します。話している途中でも「これは違う」と思えばその場で言い直します。道筋を示すことは意識しつつも、完璧ではない前提で常に振り返る姿勢を大切にしています。
サービスの評価:「言葉に力があり、発言に説得力がある」
— 対応や説明のわかりやすさはいかがでしたか?
渡辺様:
岸本先生の魅力は、言葉に力があり、発言に説得力があることです。いつもわかりやすい言葉で丁寧に説明してくださり、優しさ・厳しさ・行動力、そのすべてが伝わり、聞いている側も自然と理解が深まります。そんな姿勢は、全て人間性から来ているのだと思います。
改善点はほとんどありませんが、強いて挙げるなら、夜遅い時間にメールが届いている点でしょうか(笑)ただ、それだけ熱心に取り組んでくださっている証拠だと感じています。
岸本:
私はまず、現場の皆さんがどんな思いで工夫されているのかを、丁寧に教えていただくところからコミュニケーションを始めています。その努力に敬意をお伝えした上で、「もし一点だけ挙げるとしたら…」という温度感でお話しするようにしています。決して変えてやろうという姿勢ではなく、一緒によりよくしていけたらという気持ちで関わるように気をつけています。
ご連絡の時間帯については、今後気をつけていきます。家に帰っても気になり、調べ物をしているうちについ遅くなってしまうんです(汗)。申し訳ございません。