日本うつ病学会・日本自殺予防学会 特別合同総会において、シンポジウム「労働者の診断書:うつ状態や適応反応症と記載するとき、受け取ったとき」に登壇いたしました。
本シンポジウムでは、主治医が診断書を記載する立場、精神科クリニックで診断書を発行する立場、産業医として診断書を受け取る立場など、それぞれの視点から、労働者の診断書をめぐる課題について議論が行われました。
岸本からは、「主治医診断書の解釈をめぐる医療現場と職場のギャップ」をテーマに、嘱託産業医の立場から発表を行いました。
主治医診断書は、本人の治療や社会復帰を支えるために作成される一方で、会社に提出された後は、休職・復職の判断、就業上の配慮、配置や勤務形態の検討など、労務判断の資料として読まれます。
特に中小企業では、診断書を最初に確認するのが産業医とは限らず、社長、人事労務担当者、総務担当者、顧問社会保険労務士であることも少なくありません。そのため、「軽作業であれば復職可能」「配慮を要する」「フルリモート勤務であれば復職可能」といった文言が、職場側でどのように受け止められ、どのような解釈のズレにつながるのかを整理しました。
発表では、主治医診断書を批判するのではなく、医療側の意図と職場側の理解がすれ違う背景を整理し、会社側が勤務情報や提供可能な配慮を事前に整理すること、また嘱託産業医が主治医意見を職場で実施可能な対応に翻訳していくことの重要性についてお話ししました。
また、本発表にあたっては、社会保険労務士の先生方から、中小企業における休職・復職対応や主治医診断書をめぐる実務上の困りごとについて、貴重なご意見をいただきました。いただいたご意見は、個人や事業者が特定されないよう匿名化・一般化したうえで、発表内容に反映させていただきました。
発表後には、主治医側・産業医側の先生方と意見交換を行うことができました。診断書は「結論」ではなく、医療情報と職場情報をつなぐ「対話の出発点」として扱う必要があることを、改めて確認する機会となりました。
今後も、きしもと産業保健事務所では、精神科専門医・産業医の立場から、メンタルヘルス不調者の休職・復職対応、主治医診断書への対応、社会保険労務士の先生方との連携について、実務に役立つ形で検討を重ねてまいります。
ご意見をお寄せくださった皆さま、また当日ご参加くださった皆さまに、心より御礼申し上げます。